8.キスキスキス×××


噛み付かれたかと思った。
覆い被さってきた唇に言葉事飲み込まれる。


何が起こっているのかやっとの事で把握し
抵抗を試みる。

隆文の胸を両手で思いっきり押し返してみるものの、ビクともしない。




至近距離に見えるのは隆文の整った顔、長い睫


「・・・やっ・・ぁ・・んっ」

講義の言葉を発する際に、口を半開きにしてしまった。
それを彼が逃すはずもなく、
難なく、彼の舌が侵入してくる。


逃げようとする舌を追いかけ、あっという間に絡め取ってしまう。



この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!



あぁ・・もうダメ・・・。


酸欠状態になり捺の思考は薄れていく。
体の力が抜けてしまい、隆文にしがみついた。


それを確認したと同時に彼の唇がゆっくりと離れた。
お互いの乱れた呼吸だけがダイニングに響き渡る。


ゆっくりと、深く呼吸をし落ち着いてくると
捺の中で沸々と怒りが込み上げてきた。




バチーーーーン!!!!


「・・・・ってぇ」


「っ!何するのよ!!この変態っ!!!!!」


隆文は打たれた左頬に手を当てて、顔を顰めながら捺を睨んでいる。

捺の顔は真っ赤だ。



「てめぇ・・・グーーで殴りやがったな」



「当たり前でしょ!何でこんな事するのよ!信じらんない!バカ!!」


それだけ言うと捺は自分の部屋へと逃げる様にして
この場を去った。










部屋に逃げる様にして戻ってくると
そのままベットへとダイブした。
クッションほ抱えて、布団に潜り込む。




何だったのよ!あのキスは!?


何であんな事になっちゃったわけ?!




何度も考えてみるが、全くもって理解が出来ない。




しかし、隆文が何だか怒っている様には感じた。





でも、一体何に・・・?





ああ・・・考えても理解不能である。




つい今しがた自分の身に起きた出来事を思い出してみる。
キスをされた時、何か得体の知れない感覚に
慣れない捺は、只々翻弄されてしまった。


あんなキスした事もなかった。。


てか、ファーストキスだったのに。



あたしのファーストキスを返せーーーーーー!!!!!!









「捺ーーーおはよ〜」



「・・・・おはよ・・・」


「ちょ・・・どうしたの?顔ボロボロよ?」



何かあった?


と心配そうに聞いてくる結衣に

「ん・・・別に」

とあいまいに言葉を濁してしまった。




「別にって言う顔じゃないわよ?」


あれから、どうにも寝れなくって、
気が付いたら、一睡も出来ないまま朝を向かえていた。
怒りもあったけど、ショックの方が捺の中では大きい。


「菅野と何かあった?」



う・・・

今は奴の名前を出さないで頂きたい。

相変わらず、鋭い結衣に捺はうろたえた。


その様子に結衣はピーンときたらしい。
その顔はニヤけている。


「ははーーん。何かあったわけ、ね。」



さっきまでの心配そうだった態度は何処へやら、である。



「どうしよう・・結衣・・・私もうお嫁に行けないっ〜〜〜〜!!」


わぁ〜んと突然泣き出した捺に結衣は慌てる。


「ちょ・・捺。こっち来て」


腕を引かれてやってきたのは、屋上。



「で、落ち着いた?」
「・・うん」

まだ少し涙目の捺に、改めて涙の原因を聞いてみる。





「へぇーーキスされちゃったんだ♪」

菅野がねぇ〜
ふーん♪
へーーぇ♪

と実に楽しそうに笑うのは、結衣。



「・・・結衣・・・楽しんでない?」

ギロリと睨みつけてみる。

がそんな事にビビった様子も無く、
未だにニヤニヤしている結衣。



「あら分かる?こんな展開、楽しくない方がおかしいわよ」


「もうっ!人がこんなに落ち込んでるのに!」



「はいはい、で?捺は菅野にキスされてどう思った?」



「どうって?」



「嫌だった?」


「嫌だったに決まってるでしょ〜!?」



何で、こんな事を聞いてくるのか、
捺にはさっぱりである。


「あはは!そんなに目くじら立てないでってば」


「だって結衣、楽しんでるんだもん!
人の不幸をーーーー」



「ギャーーっ!!やめてぇーー」

捺は恨めしくなって
結衣の首を絞めてみる。



「まっ、そんなに深く考えない事ね」


今回の事は犬にでも噛まれたと思って忘れなさい、ね?
って言う結衣。



「・・・うん。そうする」




今回の事は忘れよう!!
捺はそう自分に言い聞かせた。