6.

「好きですっ!!付き合って下さい」


学校が始まって、はや2週間。

私は、ここ最近、3日連続で呼び出されている。
で、今私のいる所は、学校の屋上。


相手の男の子は、真剣な表情でじぃっと私を見つめている。

「えと・・返事貰えるかな?」


「あ・・えっと・・・ごめんなさい!私好きな人がいるんです」
男の子に向かって深くお辞儀をし、丁重に断った。
少し残念な表情をしていたけど

「そか・・分かった。」

と言って屋上から姿を消した。


「ふぅーーっ」





教室に戻ると結衣が声を掛けて来る。

「で、やっぱ告白だった訳?」



結衣は楽しそうに、ニヤニヤしながら聞いてくる。


「ん・・・みたい」


「かぁーー、モテる女は大変ねぇーー」
なんて言ってくる始末。



ここ3日はこんな会話がお決まりになっている。


「モテないよ・・罰ゲームでも流行ってるんじゃないの?」


「なんでそうなるのよ・・」


「だって、学校が始まってからまだ2週間しか経ってないんだよ?
それで、好きなんてありえなくない?」


「はぁ・・・捺に告った男子達が可愛そう」
結衣は呆れ顔で呟く。


「何でよ・・・可愛そうなのは私じゃない・・・ゲームの対象になってるかもしれないってのに」


すると結衣は一つ息を吐き出してから言った。


「捺、恋に早いも遅いも無いのよ。
一目惚れだってあるんだし」


「一目惚れなんて、ほんとにある話しなのかな?
漫画の世界でだけじゃないの???
私を好きなんて・・・そりゃぁ1人や2人好きになってくれる人がいるかもしれないけど
こう何日もそんな人がいるなんて・・・ほんとありえない」






そんな話しをしていると、慎吾くんがこちらにやってきた。


「小川さん、今から親睦会の実行委員で会議があるんだけど」


「あ、慎吾くん・・・。
・・・じゃぁ結衣ちょっと行ってくるね」

「はいはい、行ってらっしゃい」


私は慎吾くんと一緒に、会議室へ向かった。


私と慎吾君は、偶然?にも同じ実行委員になれた。

委員決めの時に、親睦会の実行委員なら
イベントが終わったら、特に活動も無いし、楽だと思って、率先的に立候補した。

すると、慎吾君も立候補したって訳。


こんな展開ありえないでしょ?って思うけど
ありえた訳で、今私達は廊下を2人並んで歩いている。




「小川さんは部活入るの?」

慎吾君が話しかけてきた。

「うーーん・・・実は迷ってるんだよねーー。
運動部に入っちゃうと、友達と放課後遊んだり出来ないし、バイトもしたいしなーーなんて。
慎吾くんは?」


「俺はテニス部かなーー」


「そっか・・テニス続けるんだーー。
慎吾くん、すごい上手だもんね。特にスマッシュが決まる所とか、
すっごく格好よかった」


ハッ!!

捺はそこまで言うと我に返った。


ヤバイっ!!

コレじゃぁ、私がいつも見てたのバレちゃった!?


自分の発した言葉に、みるみる顔が真っ赤に染まっていく。


チラっと慎吾くんを盗み見してみると
彼もほんのり顔が・・・赤い?


「ありがとう」

ふいに言われて、私は更に顔が赤くなった。


それ以降、何を話したら良いのやら
捺の頭は真っ白になってしまい、
少し重たい空気が流れている気がするのは、私の気のせいだろうか?




どうしよう・・何か話さないと・・



ふと、中庭に目をやると見知った人物を目撃し、
何とも不自然な光景に、思わず捺は立ち止まった。



「あ・・・・」




中庭には、隆文が壁にもたれる様に立っている。



・・・アイツ、あんな所で何やってるの?


捺は視線をずらすと、1人の女子の姿を捉える。
女の子の顔は真っ赤だ。

少し会話をした様子の後、女の子は泣きながらその場を去って行った。




「どうやら彼女は、振られたみたいだね」


突然頭上から降ってきた声に、ギョっとする。


「え?」


え!?何っ!?今のって告白だった訳?
わぁーー、人の告白現場見ちゃったよーー。



「彼・・えと・・菅野くんと小川さんって知り合いなんでしょ?」


「えっ!?」

思わず声が裏返ってしまった。


慎吾くんは続ける


「ほら、入学式の日に話してたでしょ?」




捺は入学式の時の事を振り返ってみる。
えーーっと・・あいつが新入生代表で、私が大声出しちゃったのよね。。。
で、確か教室でも、同じクラスだとか・・・席がどうだとか・・


「あ〜・・そんな事もあったかな」



慎吾からされた、次の問いに捺はしどろもどろになってしまう。


「いつから知り合いなの?」


「へっ!?」


いつから?!

いつからって・・・・同居する事になってからだから・・・

・・・てこんな事、慎吾君に言えないぃ〜〜〜っ!!!



「え、えぇ〜っと・・・あっ!そうそう!
私の両親とアイツ・・・ぃや違った・・
菅野君の両親が古くからの友人らしくて・・・それでね・・・ちょっと」



うん。嘘は言ってないよね?



慎吾くんは、何かを考えてる様子だったけど

「ふ〜ん、そうだったんだ」

会議室に行こう?と言われた。


そうだった!!

捺も実行委員を思い出した。


「うん、急がなきゃ!」



私達は急いで会議室へと向かった。