10.
「男女合わせて、4〜5人の班を作れ」
なっちゃん(担任)の声で、教室内からは、
「きゃーっ、男どうする?」
「誰となる?」
教室内は、一気にざわめき出す。
中には、すでに班が、幾つか出来上がっているようだ。
「捺〜〜、どうする?」
結衣の問いに、
「・・・誰でもいいけど・・・」
「とか言って、杉山と同じ班になりたいくせに」
「そりゃぁ・・・」
なりたいに決まってるけど・・・
誘ってみなさいよ♪
って簡単に言ってくれちゃう結衣に、私はじと目で睨んだ。
語尾に効果音が付いてるんじゃないかってくらい、ニヤニヤする結衣。
幸い、慎吾くんはまだ、班が決まってないみたい
そんな様子を見かねた様で、渋る私に、結衣は追い討ちを掛けてきた。
「ほら〜捺ぅ〜早くしないと、愛しのシ・ン・ゴ・君・・・他の女の子と一緒の班になっちゃうわよ?」
「・・・っ!そうだけどっ・・・」
結衣のヤツぅ〜、簡単に言ってくれちゃって
そりゃぁ、慎吾くんと同じ班になれたら、どんなに楽しいか。
私だって、軽いノリで誘える性格だったら、苦労してないっての。
”慎吾くん、一緒の班になろー”とか?
”まだ班決まってないの?私達も決まってないんだ。どう?”
・・・・・・とか?
想像してみて、首を左右に振る。
で・・・出来ない・・・。
とにかく
「無理っ!!!・・・・・・・って・・・・・アレ?」
近くにいたハズの人物がいない。
きょろきょろと教室内を見渡すと探していた人物を発見した。
「げっ」
彼女が目指してるであろう人物が視界に移り
捺は、あわわと慌てふためく。
結衣の思惑を阻止すべく、彼女を追いかけた・・・が時すでに遅し。。。
「ちょっ・・・ゆ・・ぃ・・・」
掠れた、何とも情けない声が自身から漏れる。
「杉山〜」
私の声など、勿論結衣には届いているハズもなく・・・。
結衣の掛け声に、慎吾くんが彼女を振り返った。
「私達と一緒の班にならない?」
慎吾くんが、一瞬私の方をチラッと様子を伺う様にして見た後。
「もちろんOKだよ」
「だってさ〜、捺?」
「小川さん、よろしく」
彼の綺麗すぎる、微笑みに暫し見とれていた私。
彼が、どうしたの?とでも言う様に、首を傾げられて我に返った。
「う、うん!こちらこそ・・よろしく」
☆☆☆☆☆
で、今は親睦会当日。
「よし!各班纏まって、席につけ〜」
先生の掛け声で、班ごとにバスに乗り込む。
「私、窓側〜」
と言って、私は希望通りの席をゲット
「結衣〜〜〜早く・・・って、、何で後ろ?!」
結衣は私の座った列を過ぎ、後ろの窓側に座ってしまった。
「えっ、えっ?」
おろおろとしている私に掛けられた彼女の声
「私、車酔いするから、窓側じゃないと駄目なのよね」
「・・・は?でも結衣そんなの、今まで一度も無かっ・・・」
無かったよね?と言おうとした私の声は、彼女に遮られてしまった。
「うるさいわね〜、誰が何と言おうと、私は乗り物に弱いのよ。あ、河野君こっち」
結衣は後からバスに乗ってきた河野くんを、手招きしている。
河野くんは、結衣の隣へ座ってしまった。
捺は、頬をブゥと膨らませる。
もぅっ!!結衣のヤツぅ〜〜〜。
楽しそうじゃんかぁ〜〜〜っ。
くっそぅ。。
後ろから聞こえてくる、楽しそうな笑い声をBGMに窓の外を眺めていると
隣に誰かが座っただろう、微かな振動が伝わった。
捺は、ゆっくりとその人物を仰ぎ見る、そして僅かに目を見開いた。
「えっ・・・・えっ?」
「どうも」
唖然とする捺に、爽やかな笑みを見せる、隣の人物は捺の想い人の慎吾だった。
「えっ?あっ・・・どうも」
びっくりして、思わず声が裏返りそうになったけど、普通の声が出たと思う。多分・・・
でも、その声色とは正反対に私の心臓はバクバクしている。
ひゃぁ〜〜っ、慎吾くんが隣に・・・しかもしかも・・・近すぎっ、腕が当たるっ
だっ誰か、助けて。。。
「・・・さん」
「・・・ぅ、ん・・」
「小川さん」
しっかりと聞き取れた、その声に目を覚ます。
「あ、れ?・・・わたし」
「良く眠ってたよ」
「あ、、、そっか、私寝ちゃったんだ?」
って・・・げっ
捺の思考が一気に現実へと戻ってきた。
私ってば、慎吾くんが隣にいるのにも関わらず、寝ちゃってたワケ?!
ハッ!!ヨダレ!!
両手を口に持って行き、思わず確認する。。。
よ、よかった。。。
ヨダレは垂らしていなかった。
「みみみみ・・・・・・見た?」
寝顔を・・・・。
彼に問い掛けてみる。
彼は一瞬、捺の質問の意図が分からなかった様で、
考えた風の後、
「見たよ」
と返事が返ってきた。
しかも、あの爽やかな笑顔付きで。
うっ、寝起きに、あなたのその笑顔は眩しすぎますっ!
って、違ーーうっ!
信じらんないっ、この状況で寝ちゃう私ってどうなんだよ・・・。
恥ずかしい、恥ずかしい。
ああぁぁぁ〜・・・穴があったら入りたい。。。
ほんと、信じらんない。
「えーっ、慎吾くんってお姉さんがいるんだ〜」
慎吾くん情報には、結構自信がある私。
勿論、お姉さんがいる事は、既に知っていたけれど、知らなかったフリをする。
「うん、すっごい気が強いのなんの」
その後、お姉さんの数々の武勇伝を聞きつつ、笑いが止まらなかった。
楽しかった現地までの道のり。
捺の気分は上々。
3日間、泊まることになるホテルの前でバスを降り、結衣と荷物を部屋に置きに行く事になった。
2人1部屋、もしくは3人1部屋という、何とも贅沢な部屋割りには、
とっても感謝だ。
ホテルの外観を見た時もそうだけど、
部屋に入ると、「わぁ〜」と感涙の声が漏れた。
外観は、白を貴重とした佇まいで、
部屋の中は、モダン和風と言ったやつだ。
しかも、部屋にはお風呂ではなく、露天風呂が付いている。
「素敵〜〜」
「ほんとね」
私の声に同調する様に、結衣がつぶやく。
絶対高いよね、このホテル。
たかが親睦会、されど親睦会。
奮発してんなぁ〜、ウチのガッコ・・・。
☆☆☆☆☆☆☆
「杉山と、随分楽しそうだったじゃない」
隣にした甲斐あったわ、
と、ニヤニヤと薄ら笑いを浮べる結衣。
結衣とは対照的に、捺の顔は歪む。
「んもうっ!慎吾くんが隣に座ってきて、すっごいビックリしたんだから!
それに、乗り物酔いするなんて嘘でしょ。心臓もたないかと思ったわよ」」
あ、バレた?
テヘヘって笑ってごまかす結衣。
「だって、あんた達ってさ、見ててじれったいのよね」
「・・・何が?」
結衣の言ってる意味がイマイチ理解できない。
私の頭の中はハテナが浮かび、首をかしげる。
「まっ、その話しはまた後でって事で・・・そろそろ集合場所に行かないと」
腑に落ちないけれど、仕方がない。
私達は、部屋を後にした。
この後の予定は那須サファリパークへ行くらしい。
その後、ホテルに帰宅し夕飯を食べて、自由時間との事。
2日目は、資料館やら滝を見に行くだとか・・・・
3日目は、各班で、自由行動だとか・・・・
とにかく何だか、修学旅行みたいな日程になっている。
動物を見に行って、果たして親睦が深まるのかは誰にも分からない。
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